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ハラスメント対策を進める手順|中小企業が押さえるべき相談窓口・研修・就業規則の実務

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ハラスメント対策を進める手順|中小企業が押さえるべき相談窓口・研修・就業規則の実務

ハラスメント対策は、法律で義務づけられているだけでなく、社員が安心して働ける環境をつくるために欠かせない取り組みです。しかし、中小企業では人事担当者が専任でないことも多く、「何から手をつければよいか」「どこまでやれば十分なのか」がわかりにくいのが実情です。

この記事では、ハラスメント対策を進める際の具体的な手順と、中小企業でも無理なく実施できる方法を解説します。相談窓口の設置・研修の実施・就業規則の整備という3つのステップに分けて、つまずきやすい点と判断の分かれ目を整理します。

ハラスメント対策が求められる背景

ハラスメント対策は、労働施策総合推進法(パワーハラスメント防止措置義務)、男女雇用機会均等法(セクシュアルハラスメント防止措置義務)、育児・介護休業法(マタニティハラスメント防止措置義務)によって、すべての企業に義務づけられています。違反した場合、行政指導の対象となり、企業名が公表されるリスクもあります。

法的な義務としてだけでなく、社員の定着率や採用力にも影響します。厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査」(令和2年度)では、ハラスメントを受けた社員の約3割が「退職を考えた」と回答しています。求職者が企業を選ぶ際に「ハラスメント対策の有無」を確認するケースも増えており、対策が不十分だと採用の場面で不利になることもあります。

中小企業では、管理職と社員の距離が近いため、相談しにくい・我慢してしまうといった構造的な問題が起こりやすい傾向があります。規模が小さいからこそ、相談窓口や対応手順を明確にしておくことが重要です。

ハラスメント対策を進める3つのステップステップ1相談窓口の設置・担当者の選定・相談方法の整備・周知方法の決定まずは相談できる場所を用意するステップ2研修の実施・管理職向け研修・全社員向け周知・事例の共有何がNGかを全員で理解するステップ3規程の整備・就業規則への記載・処分基準の明確化・労基署への届出会社の方針を文書で明示する
相談窓口の設置・研修の実施・規程の整備を順に進めることで、無理なく対策を根づかせることができます

ステップ1:相談窓口を設置する

ハラスメント対策の最初のステップは、社員が相談できる窓口を用意することです。「何かあったら総務に言ってください」という口頭の案内だけでは、実際に相談できる人がいるのか・どう対応されるのかが不明確で、社員は声を上げにくくなります。

担当者の選定

相談窓口の担当者は、できれば複数名を指名します。男性・女性それぞれの担当者がいると、相談しやすくなります。総務担当者が兼務する場合は、相談を受けた際の対応手順をあらかじめ決めておくことが重要です。

外部の相談窓口サービスを利用する方法もあります。社内に適任者がいない場合や、社員が社内の人に相談しにくい雰囲気がある場合は、外部サービスの導入を検討してください。費用は月額数万円程度から利用できるものもあります。

相談方法の整備

相談方法は、対面・電話・メールなど複数の手段を用意します。対面での相談が難しい場合や、匿名で伝えたい場合に備えて、メールや専用のフォームを設けておくと安心です。

相談を受けた際の記録方法も決めておきます。誰が・いつ・どのような内容を相談したか、どう対応したかを記録することで、後から確認が必要になった場合にも対応できます。記録は相談者のプライバシーに配慮して管理し、関係者以外が閲覧できないようにします。

周知方法

相談窓口を設置したら、全社員に周知します。社内掲示板・イントラネット・朝礼などで案内し、相談先の名前・連絡方法・相談できる内容を明示します。「ハラスメントに該当するか分からない場合でも相談できる」と伝えることで、早期の相談につながります。

ステップ2:研修を実施する

相談窓口を設置しただけでは、「どのような言動がハラスメントに該当するのか」が社員に伝わりません。研修を通じて、ハラスメントの定義・具体例・予防方法を共有します。

管理職向けの研修

まず管理職を対象に研修を行います。管理職は部下とのコミュニケーションが多く、無意識にハラスメントに該当する言動をとってしまうリスクが高いためです。パワーハラスメントの6類型(身体的な攻撃・精神的な攻撃・人間関係からの切り離し・過大な要求・過小な要求・個の侵害)を具体例とともに説明し、「指導」と「ハラスメント」の境界を理解してもらいます。

研修では、「なぜその言動がハラスメントに該当するのか」を理由とともに伝えることが大切です。「これを言ったらダメ」という禁止事項の羅列だけでは、納得感が得られず、現場で生かされにくくなります。

全社員向けの周知

管理職向けの研修が終わったら、全社員に向けてハラスメント対策の方針と相談窓口の案内を行います。集合研修が難しい場合は、資料を配布して読み合わせをする・動画を視聴してもらうといった方法でも構いません。

全社員向けの周知では、「被害を受けた場合は相談してほしい」だけでなく、「自分の言動がハラスメントに該当していないか振り返ってほしい」「周囲で困っている人がいたら声をかけてほしい」といったメッセージを伝えます。

事例の共有

研修では、自社や他社で起こった事例を参考に説明すると、イメージしやすくなります。ただし、自社の事例を扱う場合は、個人が特定されないように配慮が必要です。厚生労働省の「あかるい職場応援団」サイトには、裁判例や相談事例が掲載されており、研修の参考資料として活用できます。

ハラスメント対策の有無による違い対策が不十分な場合社員の不安相談先がわからない相談しても対応されない組織への影響離職率が高まる採用で敬遠される訴訟リスクが残る対策を整備した場合社員の安心相談先が明確会社が守ってくれる組織への効果定着率が向上する採用で評価される訴訟リスクを軽減
対応の有無で社員の安心感・定着率・求職者の印象が大きく変わります

ステップ3:就業規則を整備する

相談窓口の設置と研修の実施が済んだら、就業規則にハラスメント対策の方針を明記します。就業規則に記載することで、会社の方針が明確になり、社員にも周知しやすくなります。

就業規則に記載する内容

就業規則には、次の内容を盛り込みます。

  • ハラスメントを行ってはならない旨の方針
  • ハラスメントに該当する行為の具体例
  • 相談窓口の設置と相談方法
  • ハラスメントを行った場合の処分
  • 相談者・行為者のプライバシー保護
  • 相談したことを理由とした不利益取扱いの禁止

具体的な条文の例は、厚生労働省の「モデル就業規則」に掲載されています。自社の状況に合わせて調整して使うことができます。

処分基準の明確化

ハラスメントが発生した場合の処分基準を明確にしておくことも重要です。軽微な事案であれば注意・指導にとどめ、悪質な場合は懲戒処分を行うといった段階を設けます。処分基準が不明確だと、「なぜこの処分になったのか」が行為者に伝わらず、不服申立てのリスクも高まります。

処分を行う際は、事実関係の確認が必要です。相談者・行為者・第三者からそれぞれ聞き取りを行い、客観的な証拠(メール・チャットの記録など)があれば確認します。一方の主張だけで判断すると、後から「事実と異なる」と争いになる可能性があります。

労働基準監督署への届出

就業規則を変更した場合は、労働基準監督署に届け出る必要があります(常時10人以上の労働者を使用する事業場の場合)。届出には、変更後の就業規則と労働者代表の意見書を添付します。

就業規則の整備については、就業規則を整備しないリスクと見直しの進め方の記事でも詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。

実際に相談があった場合の対応

相談窓口に相談があった場合、次の手順で対応を進めます。

1. 相談内容の聞き取り

相談者から、いつ・どこで・誰から・どのような言動を受けたかを聞き取ります。相談者が話しやすい環境をつくり、否定や説得をせずに聞くことが大切です。「それくらいで相談するのか」といった態度をとると、相談者は二次被害を受けたと感じ、信頼を失います。

2. 事実関係の確認

相談者の話を聞いた後、行為者や第三者からも事実を確認します。行為者に確認する際は、相談者が特定されないように配慮しながら、客観的な事実を確認します。「〇〇さんから相談があった」と伝えると、相談者が報復を受けるリスクがあるため、慎重に進めます。

3. 対応方針の決定

事実関係が確認できたら、対応方針を決めます。ハラスメントに該当する場合は、行為者への注意・指導・配置転換・懲戒処分などを検討します。相談者が希望する対応(行為者との距離を置きたい・謝罪を求めたいなど)も確認し、可能な範囲で配慮します。

4. 再発防止策の検討

個別の対応が終わったら、再発防止策を検討します。同様の事案が起こらないように、研修の内容を見直す・管理職への注意喚起を行うといった対応を行います。

外部の専門家を活用する

ハラスメント対策を進める過程で、判断に迷う場面が出てきた場合は、弁護士や社会保険労務士に相談することをおすすめします。特に、処分を検討する場合や、相談者と行為者の主張が大きく食い違う場合は、専門家の助言を受けることでリスクを減らせます。

厚生労働省の「あかるい職場応援団」サイトでは、ハラスメント対策の進め方や相談事例が公開されており、自社で対応を進める際の参考になります。また、都道府県労働局には総合労働相談コーナーが設置されており、ハラスメントに関する相談を無料で受け付けています。

当社では、経営コンサルティングの一環として、就業規則の整備や社内体制の構築を支援しています。ハラスメント対策の進め方についてご不明な点があれば、お問い合わせからご相談ください。

まとめ

ハラスメント対策は、相談窓口の設置・研修の実施・就業規則の整備という3つのステップで進めることができます。一度にすべてを整える必要はなく、まずは相談窓口を設けて社員に周知することから始めてください。

対策を進める際は、「法律で決まっているから」ではなく、「社員が安心して働ける環境をつくるため」という目的を社内で共有することが大切です。形だけの対応ではなく、実際に相談しやすい雰囲気をつくることが、定着率の向上や採用力の強化にもつながります。

ハラスメント対策は一度整備したら終わりではなく、社員の入れ替わりや法改正に合わせて見直しを続けることが求められます。定期的に研修を実施し、相談窓口の存在を改めて周知することで、対策を根づかせることができます。

この記事について

本記事は制度や一般的な考え方を解説したものです。実際のご判断にあたっては、個別の状況により結論が異なる場合があります。具体的なご相談は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。

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