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就業規則を整備しないリスクと見直しの進め方|中小企業が押さえるべき作成・届出の実務手順

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就業規則を整備しないリスクと見直しの進め方|中小企業が押さえるべき作成・届出の実務手順

就業規則は、従業員が10人以上になると労働基準法で作成・届出が義務づけられますが、それ以下の人数でも整備しておくことで労使トラブルの予防につながります。本記事では、就業規則を整備しないリスクと、中小企業が自社で作成・届出・見直しを進める際の実務手順を解説します。

就業規則を整備しないことで起きるリスク

就業規則がない、または古い内容のまま放置されていると、次のようなリスクが生じます。

  • 労使トラブルの長期化: 退職や懲戒処分の基準が明文化されていないと、従業員との認識のずれが争いに発展しやすくなります。
  • 助成金の受給要件を満たせない: 雇用関係の助成金の多くは、就業規則の整備と労働基準監督署への届出が前提となっています。
  • 法改正への対応遅れ: 育児介護休業法やパワハラ防止法など、近年の法改正に対応していないと、知らないうちに法令違反の状態になる可能性があります。
  • 採用時の説明不足: 労働条件を口頭だけで説明していると、入社後に「聞いていた話と違う」というトラブルが起きやすくなります。

厚生労働省の「令和4年就労条件総合調査」によれば、常用労働者30人以上の企業では就業規則の作成率が9割を超えていますが、小規模事業所では整備が遅れがちです。

就業規則に記載すべき事項

労働基準法第89条では、就業規則に記載すべき事項を「絶対的必要記載事項」と「相対的必要記載事項」に分けています。

就業規則に記載する項目の分類絶対的必要記載事項相対的必要記載事項• 始業・終業時刻• 休憩時間・休日・休暇• 賃金の決定・計算方法• 賃金の支払方法・締切日• 昇給に関する事項• 退職に関する事項→ 必ず記載しないと  労基署に受理されない• 退職金の有無・計算方法• 賞与・最低賃金額• 安全衛生・職業訓練• 災害補償・表彰・制裁→ 制度があれば記載が必要  ない場合は省略可
必須記載事項を満たした上で、自社の実態に合わせて任意記載事項を追加することで実効性が高まります

絶対的必要記載事項(必ず記載が必要)

次の6項目は、どの企業でも必ず就業規則に記載しなければなりません。

  • 始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇
  • 賃金の決定・計算方法、支払方法、締切日・支払日
  • 昇給に関する事項
  • 退職に関する事項(解雇事由を含む)

これらが欠けていると、労働基準監督署に届出を出しても受理されません。

相対的必要記載事項(制度があれば記載が必要)

次の項目は、自社に制度がある場合に記載が必要になります。

  • 退職金の有無、計算・支払方法
  • 賞与、最低賃金額
  • 安全衛生、職業訓練
  • 災害補償、業務外の傷病扶助
  • 表彰および制裁の種類と程度

たとえば退職金制度を設けていない場合は、その旨を明記するか項目自体を省略できます。一方、懲戒処分の制度を運用する場合は、処分の種類(戒告・減給・出勤停止・懲戒解雇など)と対象となる行為を具体的に書く必要があります。

就業規則の作成から届出までの手順

実際に就業規則を整備する際の流れを、ステップごとに見ていきます。

1. 現状の労働実態を把握する

まず、自社の勤務時間・休日・賃金体系・休暇制度などを洗い出します。口頭で運用しているルールや、慣習として続いている取り決めも含めて書き出しておくと、後の原案作成がスムーズになります。

2. 原案を作成する

厚生労働省が公開している「モデル就業規則」をベースに、自社の実態に合わせて修正していく方法が一般的です。モデル就業規則は厚生労働省のウェブサイトから無料でダウンロードできます。

ただし、モデルはあくまで標準的な例なので、テレワーク制度やフレックスタイム制、変形労働時間制など、自社独自の働き方がある場合は条文を追加・修正する必要があります。この段階で不安がある場合は、社会保険労務士に相談することをおすすめします。

3. 従業員代表の意見を聴く

就業規則を届け出る際には、従業員の過半数で組織する労働組合(ない場合は従業員の過半数を代表する者)の意見書を添付することが義務づけられています。意見書には賛成・反対のどちらを書いてもよく、反対意見があっても届出自体は可能ですが、内容に納得を得られるよう事前に説明する機会を設けることが望ましいです。

4. 労働基準監督署に届け出る

就業規則本体と意見書を、事業所を管轄する労働基準監督署に提出します。窓口への持参のほか、郵送や電子申請(e-Gov)も利用できます。届出後は、労働基準監督署の受理印が押された控えを保管しておきます。

5. 全従業員に周知する

就業規則は作成・届出だけでは効力を持たず、従業員に周知して初めて有効になります。周知方法としては、次のいずれかが認められています。

  • 常時、各作業場の見やすい場所に掲示する、または備え付ける
  • 書面で従業員に交付する
  • 社内ネットワーク上で、従業員がいつでも閲覧できるようにする

紙のファイルで保管する場合は、総務部門や休憩室など従業員が自由に見られる場所に置き、その旨を入社時のオリエンテーションで説明しておくとよいでしょう。

就業規則の整備・見直しの流れ1. 現状把握労働実態の確認2. 原案作成必須項目の記載3. 意見聴取過半数代表へ4. 届出労基署に提出5. 周知全従業員へ6. 定期見直し年1回程度見直しのタイミング例• 法改正(育児介護休業法・労基法など)があったとき• 勤務形態を変更したとき(テレワーク導入など)• 賃金体系や人事制度を変えたとき• 労使トラブルが起きて規定の不備が明らかになったとき
届出後も法改正や社内制度の変更に合わせて定期的に見直すことで、労使トラブルの予防につながります

就業規則を見直すべきタイミング

就業規則は一度作ったら終わりではなく、定期的に見直すことが重要です。次のようなタイミングで内容を確認し、必要に応じて変更届を労働基準監督署に提出します。

法改正があったとき

労働基準法、育児介護休業法、労働契約法、パワハラ防止法(労働施策総合推進法)など、労働法令の改正は頻繁に行われます。たとえば2022年には育児介護休業法が段階的に改正され、男性の育児休業取得促進や有期雇用労働者の取得要件緩和などが盛り込まれました。法改正の内容を就業規則に反映しないと、実務上のトラブルや労働局の指導対象になる場合があります。

勤務形態を変更したとき

テレワーク制度の導入、フレックスタイム制の開始、変形労働時間制への移行など、働き方に関する制度を新設・変更した場合は、就業規則への反映が必要です。特にテレワークでは、労働時間の管理方法や通信費の負担、セキュリティ規定などを明記しておくことで、後のトラブルを防げます。

賃金体系や人事制度を変えたとき

基本給の決定方法、諸手当の新設・廃止、賞与の支給基準、昇給・昇格の仕組みなどを変更した場合も、就業規則の変更届が必要です。賃金に関する変更は従業員の生活に直結するため、意見聴取の段階で十分に説明し、理解を得ることが大切です。

労使トラブルが起きたとき

実際にトラブルが発生してから規定の不備に気づくケースもあります。たとえば、懲戒処分の対象行為が明記されていなかったために処分の根拠を示せなかった、副業・兼業の可否が不明確だったために解釈が分かれた、といった事例です。こうした場合は、同じ問題が再発しないよう規定を見直します。

社会保険労務士への相談を検討すべきケース

就業規則の作成や見直しは自社で行うことも可能ですが、次のような場合は社会保険労務士に相談することで、リスクを減らせます。

  • 複数の事業所がある: 事業所ごとに就業規則を作るか、本社で一本化するかなど、届出の方法が複雑になります。
  • 特殊な労働時間制を導入したい: 変形労働時間制、裁量労働制、フレックスタイム制などは、労使協定の締結や届出が別途必要になる場合があります。
  • 助成金の申請を予定している: 助成金の要件として、特定の規定を就業規則に盛り込む必要がある場合があります。要件を満たす文言を事前に確認しておくことで、申請時の手戻りを防げます。
  • 労使トラブルが既に発生している: 紛争が起きている状況で規定を変更すると、不利益変更とみなされるリスクがあります。専門家の助言を受けながら慎重に進めることが望ましいです。

社会保険労務士への相談は、顧問契約を結ぶ方法のほか、スポットで作成・見直しを依頼する方法もあります。費用は事業所の規模や業種によって異なりますが、初回作成で10万円〜20万円程度、変更届の作成で数万円程度が目安です。

なお、法務の専門家への相談が必要な具体的な判断については、個別の状況に応じて社会保険労務士または弁護士にご相談ください。

まとめ

就業規則の整備は、従業員10人以上で法的義務となりますが、それ以下の規模でも労使トラブルの予防や助成金の受給要件として重要です。作成時には絶対的必要記載事項を漏れなく盛り込み、従業員代表の意見聴取と労働基準監督署への届出、全従業員への周知という手順を踏む必要があります。

また、就業規則は一度作って終わりではなく、法改正や勤務形態の変更、賃金制度の見直しなどに合わせて定期的に更新することで、実効性を保つことができます。自社で対応が難しい場合や、複雑な制度を導入する際には、社会保険労務士への相談を検討するとよいでしょう。

株式会社S&K Consultantでは、経営コンサルティングを通じて企業の組織づくりを支援しています。就業規則の整備を含む労務環境の改善や、助成金の活用についてもご相談いただけます。ご関心のある方はお問い合わせページからお気軽にご連絡ください。

この記事について

本記事は制度や一般的な考え方を解説したものです。実際のご判断にあたっては、個別の状況により結論が異なる場合があります。具体的なご相談は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。

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