【2025年最新版】小規模事業者持続化補助金 完全攻略ガイド|申請から採択後の手続きまで専門家が徹底解説

第1部:制度の全体像を掴む – 小規模事業者持続化補助金とは?

小規模事業者持続化補助金は、単なる資金提供制度ではありません。これは、変化し続ける経済環境の中で小規模事業者が持続的な成長を遂げるための戦略的ツールです。本章では、この補助金の核心的な目的、対象者の厳密な定義、そして資金の詳細について、専門的な視点から深く掘り下げて解説します。

1.1 補助金の目的と採択されるメリット

小規模事業者持続化補助金の根幹にある目的は、地域の雇用と産業を支える小規模事業者が、自社の経営課題と向き合い、将来に向けた持続的な経営計画を策定し、それに基づいて行う販路開拓や生産性向上の取り組みを支援することにあります 1。特に、近年の物価高騰、賃上げ圧力、インボイス制度の導入といった、事業者が直面する複数の制度変更へ対応する力を養うことが重視されています 4

この補助金の採択がもたらすメリットは、補助金そのものを超えた価値を持ちます。最大のメリットは、申請プロセスを通じて、自社の経営状況、強み・弱み、市場環境を客観的に分析し、具体的な成長戦略を描く「経営計画」を策定する機会を得られる点です。このプロセス自体が、事業の方向性を明確にし、経営の質を高める貴重な経営コンサルティングの役割を果たします。

さらに、この制度の背景には、政府の経済政策との強い連動性が見られます。公募要領で繰り返し言及される「制度変更への対応」という文言は、単なる背景説明ではなく、審査における重要な視点を示唆しています。政府は、この補助金を活用して、小規模事業者のデジタル化推進や賃上げ促進といったマクロ経済政策の実現を目指しています。したがって、申請する事業計画が、単に自社の利益追求だけでなく、これらの政策目標にいかに貢献するかを示すことができれば、審査員に対してより強い説得力を持つことになります。例えば、インボイス制度対応のための会計システム導入を計画に盛り込むことは、国の政策に合致した取り組みとして評価される可能性が高まります。

1.2 補助対象者の詳細要件

補助金の対象となる「小規模事業者」の定義は厳格に定められており、この基準を満たさなければ申請プロセスに進むことはできません。最も重要な基準は「常時使用する従業員の数」であり、これは業種によって異なります 2

表1:補助対象者の定義(業種別常時使用する従業員数)

業種 常時使用する従業員の数
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) 5人以下
宿泊業・娯楽業 20人以下
製造業その他 20人以下

ここで注意すべきは、「常時使用する従業員」の定義です。この数には、会社役員、個人事業主本人、そして一定の条件を満たすパートタイム労働者は含まれません 2。この定義を誤解し、従業員数を過大または過少に申告することは、申請不備による不採択の典型的な原因となるため、細心の注意が必要です。

加えて、以下の消極的要件も満たす必要があります 6

 

    • 資本金または出資金が5億円以上の法人に直接または間接に100%の株式を保有されていないこと(法人のみ)。

    • 確定している直近過去3年分の各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと。

    • 商工会または商工会議所の管轄地域内で事業を営んでいること。

これらの要件を一つでも満たさない場合、申請資格はないと判断されます。

1.3 補助上限額・補助率・対象経費の徹底解説

本補助金の財務構造は、基本となる「通常枠」と、特定の政策目標達成を目指す事業者向けの「特例」から構成されます。

 

    • 補助上限額と補助率

       

        • 一般型 通常枠: 補助上限額は50万円、補助率は原則として対象経費の$2/3$です 3

        • 特例措置:

           

            • インボイス特例: 免税事業者からインボイス発行事業者に転換する事業者は、上限額に50万円が上乗せされます 3

            • 賃金引上げ特例: 事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる事業者は、上限額に150万円が上乗せされます。さらに、赤字事業者の場合は補助率が$3/4$に引き上げられる優遇措置があります 2

            • 両方の特例を適用する場合、補助上限額は最大で200万円となります 3

        • 創業型: 創業支援を受けるなど一定の要件を満たす事業者は、補助上限額200万円の別枠で申請が可能です 3

    • 補助対象経費補助対象となる経費は、策定した経営計画に基づいて実施される販路開拓等の取り組みに直接必要なものに限定されます 4。対象経費は多岐にわたりますが、同時に厳格なルールが設けられています。特に、補助対象外となる経費を計画に含めてしまうと、採択の取り消しや補助金額の減額につながるため、事前の確認が不可欠です。

表2:補助対象経費一覧(対象・対象外の具体例)

経費区分 対象となる経費の例 対象とならない経費の例
①機械装置等費 新商品の製造に必要な製造装置、店舗のサービス提供に使う専用機材 事業目的外にも使用できるパソコン、タブレット、家庭用電気機械器具 2
②広報費 新商品・サービスをPRするためのチラシ作成・配布、新聞・雑誌への広告掲載 会社案内パンフレットの作成、単なる名刺の作成
③ウェブサイト関連費 ECサイトの構築、オンライン予約システムの導入、販促用LPの制作 自社ウェブサイトの維持管理費、ドメイン取得費用、サーバー代 2
④展示会等出展費 国内外の展示会や商談会への出展料、関連する運搬費 出展に伴う交際費、飲食費
⑤旅費 販路開拓のための国内・海外出張にかかる交通費、宿泊費(必要最小限) 日当、出張中の個人的な費用
⑥新商品開発費 新商品の試作品開発に必要な原材料費、パッケージデザイン費用 開発に従事する従業員の人件費
⑦借料 補助事業遂行に直接必要な機器・設備のリース・レンタル料 事務所の家賃、駐車場代
⑧委託・外注費 特定の業務(市場調査、デザイン、専門家指導など)を外部に依頼する費用 申請書類の作成代行費用 8

支払方法に関する重要注意点:

 

    • 原則として銀行振込での支払いが求められます。特に、1取引10万円(税抜)を超える支払いを現金で行った場合、その経費は補助対象外となります 2

    • クレジットカード払いは可能ですが、口座からの引き落とし日が補助事業実施期間内でなければなりません 2

    • 相殺、小切手、商品券による支払いは認められません 2

1.4 申請類型:通常枠・賃金引上げ枠・創業枠等の戦略的活用

本補助金には、事業者の状況や目指す方向性に応じて複数の申請類型(枠)が用意されています 7。これらの枠は単なる選択肢ではなく、政府がどのような事業活動を奨励しているかを示す政策シグナルと解釈できます。自社の事業計画をこれらの政策シグナルと合致させることは、採択に向けた重要な戦略となります。

 

    • 通常枠: 小規模事業者が行う販路開拓等の基本的な取り組みを支援する、最も標準的な枠です 7

    • 賃金引上げ枠: 販路開拓に加え、従業員の賃金引き上げに意欲的に取り組む事業者を対象とします 7。事業場内最低賃金を地域別最低賃金より一定額(例:+50円以上)引き上げることが要件となります 2。これは、デフレ脱却と消費喚起を目指す国の経済政策と直結しており、この枠で申請することは、社会貢献性の高い事業であるとアピールすることにつながります。

    • 卒業枠: 補助事業を通じて雇用を増やし、小規模事業者の定義を超える規模への成長を目指す事業者を支援します 7。企業の成長と雇用創出を後押しする政策意図が明確であり、成長意欲の高い計画は高く評価される傾向にあります。

    • 創業枠: 特定創業支援等事業による支援を受けた創業者を対象とした枠です 8。起業・創業を促進するという明確な政策目的があり、独自の公募スケジュールが組まれることもあります 3

これらの枠の中から、自社の経営戦略と最も親和性が高く、かつ国の政策方針に貢献できるものを戦略的に選択することが、競争の激しい審査を通過するための鍵となります。

第2部:申請への完全ロードマップ – 準備から提出までのステップバイステップ

補助金の申請は、周到な準備と厳格なスケジュール管理が成否を分けるプロセスです。本章では、申請準備の「フェーズゼロ」から、最新の第18回公募における具体的な手続きまでを、実践的なロードマップとして提示します。

2.1 申請前の必須準備:GビズID取得と商工会相談

申請期間が始まってから準備を始めるのでは手遅れです。以下の2点は、公募開始のアナウンスを待たずに、可及的速やかに着手すべき最重要事項です。

 

    1. GビズIDプライムアカウントの取得電子申請システムの利用に必須となるのが「GビズIDプライムアカウント」です 10。このアカウントは、様々な行政サービスへのログインを可能にする共通認証システムであり、取得には申請から1〜2週間、場合によってはそれ以上の期間を要します 10。特に、第18回公募では電子申請が唯一の申請方法とされているため 4、このIDがなければ申請のスタートラインに立つことすらできません。

    1. 商工会・商工会議所への相談本補助金は、事業者が地域の商工会・商工会議所の支援を受けながら取り組むことが前提となっています 2。申請には、商工会・商工会議所が発行する「事業支援計画書(様式4)」の提出が必須です 2。この書類の発行を依頼するためには、事業者自身が商工会の経営指導員等と面談し、事業計画の内容について助言を受ける必要があります。ここで重要なのは、商工会・商工会議所が単なる書類発行機関ではなく、実質的な「一次審査機関」および「パートナー」としての役割を担っているという点です。様式4の発行依頼には、最終申請締切日よりも早い締切日が設定されています 5。これは、計画内容の精査に十分な時間を確保するためであり、計画の実現可能性が低いと判断されれば、様式4は発行されません 5。また、社外の代理人のみによる相談は認められておらず、事業者本人の主体的な関与が強く求められています 2。このことは、政府が質の低い代行業者による申請の乱立を防ぎ、事業者自身の経営能力向上を促す意図を持っていることを示しています。したがって、商工会との相談は、計画をブラッシュアップし、専門家の視点からフィードバックを得る絶好の機会と捉え、積極的に活用すべきです。

2.2【第18回公募】申請全体の流れと重要スケジュール

第18回公募のスケジュールは、複数の重要なマイルストーンで構成されています。これらの日付を厳守することが、申請の絶対条件です。

表3:第18回公募 重要スケジュール一覧

項目 日付 内容 アクション/注意点
公募要領公開 2025年6月30日(月) 申請に関する公式ルールブックの公開 12 全文を熟読し、要件や対象経費を正確に理解する。
申請受付開始 2025年10月3日(金) 電子申請システムでの申請受付開始 12 GビズIDの準備を完了させ、申請システムにログインできるか確認する。
事業支援計画書(様式4)発行受付締切 2025年11月18日(火) 商工会・商工会議所への様式4発行依頼の最終日 5 最重要中間締切。 10月中には商工会との面談を予約し、経営計画書案を完成させる必要がある。この日を過ぎると申請不可。
申請受付締切 2025年11月28日(金) 電子申請システムでの最終申請締切(17:00厳守) 5 締切直前はシステムが混雑する可能性があるため、数日前に提出を完了させることが望ましい。

これらのスケジュールを基に、自身の作業計画を逆算して立てることが、余裕を持った申請準備につながります。

2.3 失敗しないための電子申請:Jグランツ利用のポイント

第18回公募では、郵送による申請は一切受け付けられず、経済産業省の補助金申請システム「Jグランツ」を利用した電子申請のみが有効です 4。これは、過去の公募で郵送申請が減点対象とされていた流れ 10 をさらに進め、行政手続きの完全デジタル化を推進する政府の方針を反映したものです。この変更は、小規模事業者に対して、事業運営におけるデジタル対応能力を必須要件として課していることを意味します。

Jグランツを利用する際の主なポイントは以下の通りです。

 

    • GビズIDとの連携: Jグランツへのログインには、事前に取得したGビズIDプライムアカウントを使用します 15。システムはGビズIDに登録された事業者情報(法人名、代表者名、所在地など)を自動で読み込むため、登録情報が最新かつ正確であることを必ず確認してください。特に、個人事業主から法人成りした場合などは、GビズIDの登録情報更新が必須です 15

    • 操作マニュアルの熟読: 事務局から公式の操作マニュアルが提供されています 12。申請フォームの入力方法や必要書類のアップロード手順など、詳細な指示が記載されているため、作業開始前に必ず一読してください。

    • 必要書類の電子化: 申請に必要な全ての書類(開業届の写し、決算書、見積書など)は、PDFなどの指定されたファイル形式でスキャンまたは作成し、アップロードする必要があります 15。税務署の受付印など、必要な印影が鮮明に写っているかを確認することが重要です。

    • 時間的余裕: 初めてシステムを利用する場合、操作に戸惑う可能性があります。また、締切間際にはアクセスが集中し、システムの動作が不安定になることも考えられます。全ての書類準備と入力作業を締切日の数日前には完了させ、余裕を持って提出手続きを行うことを強く推奨します。

第3部:採択を勝ち取る「経営計画書」作成の技術

申請プロセスにおいて、採択・不採択を決定づける最も重要な要素が「経営計画書」です。これは単なる申請書類ではなく、自社のビジョンと戦略を審査員に伝えるためのプレゼンテーション資料です。本章では、審査員の視点を踏まえ、説得力のある経営計画書を作成するための具体的な技術を解説します。

3.1 審査員は何を見ているのか?審査の観点と加点項目

審査は、外部の有識者によって、提出された経営計画書に基づき行われます 1。評価が高いものから順に採択となるため 10、審査員がどの点を重視しているかを理解することが、計画書作成の出発点となります。

審査の主な観点 7

 

    1. 自己分析の的確性: 自社の経営状況、製品・サービスの強みと弱みを客観的かつ正確に把握しているか。

    1. 市場分析の妥当性: 対象とする市場(商圏)の特性や顧客ニーズ、競合の動向を適切に踏まえているか。

    1. 計画の整合性: 経営方針や目標が、自己分析と市場分析の結果に裏付けられた、論理的なものであるか。

    1. 補助事業の有効性: 提案されている補助事業(販路開拓等の取り組み)が、経営計画全体の目標達成に必要不可欠かつ効果的なものか。

    1. 実現可能性: 補助事業の計画が具体的で、スケジュールや資金面で実現可能性が高いか。

    1. 独自性と革新性: 小規模事業者ならではの創意工夫や、ITを有効活用する取り組みが見られるか。

    1. 費用対効果: 計上されている経費が事業内容と合致し、積算が正確かつ妥当であるか。

これらの観点は、単に優れた事業アイデアを求めているのではなく、事業者自身の「経営者としての能力」を評価していることを示しています。市場を分析し、自社の立ち位置を理解し、論理的な戦略を立て、それを具体的な行動計画に落とし込む能力があるか。経営計画書は、その能力を証明するための試験とも言えます。

加点項目:

審査では、基礎的な評価に加え、特定の政策目標に貢献する取り組みに対して加点が行われます。これらを計画に盛り込むことは、競争優位性を確保するための重要な戦略です 2。

 

    • 賃金引上げ加点: 従業員への成長果実の分配に意欲的な事業者(賃金引上げ特例の要件を満たす計画)。

    • 地方創生型加点: 地域の資源を活用し、地域外への販路開拓や地域課題解決に貢献する計画。

    • 小規模事業者卒業加点: 補助事業を通じて従業員数を増やし、小規模事業者の定義を超える成長を目指す計画。

    • 事業継続力強化計画策定加点: 自然災害等のリスクに備え、国が認定する「事業継続力強化計画」を策定している事業者。

3.2 様式2「経営計画」①:企業概要・顧客ニーズと市場の動向

このセクションは、計画書全体の土台となる部分です。ここで審査員に「この事業者は自社と市場を深く理解している」という第一印象を与えることが重要です。

 

    • 企業概要:誰が読んでも事業内容が一目で理解できるよう、専門用語を避け、簡潔に記述します 17。店舗や商品の写真を効果的に使用し、視覚的に訴える工夫も有効です 17。売上構成や過去3年間の売上推移は、表やグラフを用いて分かりやすく示しましょう 17。

    • 顧客ニーズと市場の動向:主観的な思い込みではなく、客観的なデータに基づいて記述することが鉄則です。「お客様からこんな要望があった」という具体的なエピソードに加え、国勢調査や業界団体の統計データなどを引用し、市場の動向を裏付けます 17。データの出所を明記することで、分析の信頼性が格段に向上します。自社の商圏エリアの人口動態や競合店の状況など、ミクロな視点での分析も不可欠です 17。

3.3 様式2「経営計画」②:自社の強み・経営方針と今後のプラン

分析パートの集大成として、自社の進むべき道筋を具体的に示すセクションです。

 

    • 自社や自社の提供する商品・サービスの強み:「品質が高い」「サービスが良い」といった抽象的な表現ではなく、競合他社と比較して何が、どのように優れているのかを具体的に記述します 17。Googleマップの口コミ、顧客アンケートの結果、メディア掲載実績など、第三者による客観的な評価を盛り込むことで、強みの説得力が増します 17。

    • 経営方針・目標と今後のプラン:ここでの鍵は、これまでの分析(市場、顧客、自社の強み)と、これから述べる計画との間に、一貫した論理的なつながり(ストーリー)を構築することです。SWOT分析などのフレームワークを活用し、「市場にはこのような機会(Opportunity)があり、当社のこの強み(Strength)を活かせば、その機会を捉えることができる。そのために、この経営方針に基づき、今後3〜5年でこのような目標を達成する」という流れを明確に示します 17。数値目標(例:「3年後に売上を20%向上させる」)と、それを達成するための具体的なプラン(誰が、いつ、何をするか)をセットで記述することが求められます 17。

3.4 様式3「補助事業計画」:具体的で説得力のある計画の構築

経営計画書(様式2)で描いた壮大なビジョンを、補助金を使って実行する具体的なアクションプランに落とし込むのが、この「補助事業計画書(様式3)」です。

 

    • 補助事業で行う事業名:30文字以内という制約の中で、事業内容が瞬時に理解でき、かつ魅力的に伝わる名称を考案します 18。例:「地元特産品を活用した新ECサイト構築による全国販路開拓事業」

    • 販路開拓等の取組内容:様式2で特定した経営課題を解決し、目標を達成するための具体的な取り組みを詳細に記述します。ここでのポイントは、「経営計画との整合性」です 18。例えば、経営計画で「若年層顧客の獲得が課題」と分析したなら、補助事業では「SNS広告とインフルエンサーを活用したプロモーション」といった具体的な解決策を提示します。漠然とした計画ではなく、スケジュール、担当者、具体的な手法などを盛り込み、実現可能性の高さをアピールすることが重要です 17。

    • 補助事業の効果:補助事業を実施することで、どのような成果が期待できるのかを、可能な限り定量的に示します 18。売上高、来客数、顧客単価、ウェブサイトのアクセス数など、具体的な数値目標を設定し、その算出根拠も簡潔に説明します。これにより、計画の妥当性と投資対効果の高さを審査員に納得させることができます。過去に採択された事業計画(例:プロテクターの商品開発、鮮魚の加工品開発、農産物のPR事業など)を参考に、自社の取り組みがどのような波及効果を生むかを具体的にイメージすると良いでしょう 16。

第4部:採択決定後から入金まで – 油断禁物の最終フェーズ

多くの事業者が申請書の作成に全力を注ぎますが、採択決定後の手続きで思わぬ落とし穴にはまるケースは少なくありません。補助金を確実に受給するためには、採択後のフェーズこそ細心の注意が求められます。本章では、交付決定から補助金の入金までのプロセスと、厳守すべきルールを解説します。

4.1 交付決定通知後の重要アクションと厳守事項

審査を経て採択が決定すると、事務局から「採択通知書」および「交付決定通知書」が送付されます 14。この「交付決定通知書」の受領が、補助事業を開始できる正式な合図です。

最重要厳守事項:

交付決定通知書に記載された「交付決定日」より前に発注・契約・支払い等を行った経費は、一切補助対象となりません 14。たとえ採択が内定していても、正式な通知を受け取る前に事業に着手してしまうと、その費用は全額自己負担となります。これは、補助金不正受給を防ぐための厳格なルールであり、例外は認められません。

また、補助事業は定められた「補助事業実施期間」内に、発注から支払いまで全ての工程を完了させる必要があります 8。期間の延長は原則として認められないため、納品に時間がかかる設備投資などは、スケジュール管理に特に注意が必要です 8

4.2 補助事業の実施と経費管理の鉄則

補助事業の実施期間中は、後の実績報告に向けて、全ての取引証憑を完璧に管理することが求められます。

 

    • 証拠書類の保管: 発注書、契約書、納品書、請求書、そして支払いを証明する書類(銀行の振込明細書など)は、一つの取引ごとにセットで整理・保管してください。

    • 支払方法の遵守: 原則として銀行振込を利用し、振込明細書を保管します 2。クレジットカードで支払う場合は、カード利用明細書と、その代金が口座から引き落とされたことがわかる通帳のコピーの両方が必要です。引き落とし日が補助事業実施期間を過ぎていると対象外になるため、カードの締め日と支払日を事前に確認しておく必要があります 2

    • 計画変更の事前承認: 採択された補助事業計画の内容(購入する物品、委託先など)をやむを得ず変更する場合は、必ず事前に事務局の承認を得る必要があります 8。事後報告では認められず、補助対象外となるリスクがあります。

4.3 最終関門「実績報告」と補助金の受給

補助事業が完了したら、最終関門である「実績報告」の手続きに移ります。

 

    1. 実績報告書の提出:補助事業実施期間の終了後、定められた期限内(例年、期間終了後10日以内など非常に短い 14)に、実施した事業内容と支出した経費の内訳をまとめた「実績報告書」を、全ての証拠書類の写しと共に提出します 14。

    1. 確定検査:提出された報告書と証拠書類に基づき、事務局が計画通りに事業が実施されたか、経費の支出が適正であったかを審査します(確定検査) 14。内容に不備や不明点があれば、問い合わせや追加資料の提出を求められます。

    1. 補助金額の確定・請求:確定検査が完了すると、交付すべき補助金の額が正式に決定され、「確定通知書」が送付されます 14。この通知書を受け取った後、事業者は事務局に対して「精算払請求書」を提出し、補助金の支払いを請求します。

    1. 補助金の入金:請求手続き完了後、指定した銀行口座に補助金が振り込まれます 14。申請準備からこの入金まで、1年以上の期間を要することも珍しくありません 10。

ここで理解すべき最も重要な点は、本補助金が「精算払い(後払い)」であるという事実です 8。事業者は、補助事業にかかる経費の全額を、一旦自己資金で立て替えなければなりません。例えば、補助率$2/3$で30万円の補助金を受ける場合でも、まずは45万円の事業費を全額支出し、数ヶ月後に30万円が振り込まれるという流れになります。この資金繰りの負担は、事業者にとって一種の「財務的なストレステスト」と言えます。申請を検討する段階で、補助事業を完遂できるだけの自己資金(運転資金)を確保できるか、現実的な資金計画を立てておくことが極めて重要です。

結論:持続的成長への第一歩

小規模事業者持続化補助金は、単なる資金援助の枠を超え、事業者が自らの経営と向き合い、未来への戦略を構築するための強力な触媒です。本稿で詳述した通り、この制度を最大限に活用し、採択を勝ち取るためには、4つの重要な要素が不可欠です。

第一に、早期準備の徹底です。GビズIDの取得や商工会との連携は、公募開始を待たずに着手すべき必須事項であり、この初動の差が最終的な結果を左右します。

第二に、政策意図との戦略的整合性です。賃金引上げやデジタル化といった国の政策方針を自社の経営計画に組み込むことで、申請の社会的な意義を高め、審査における競争優位性を確立できます。

第三に、データに基づく説得力のある物語の構築です。経営計画書は、客観的なデータ分析に基づき、自社の強みを活かして市場機会を捉えるという、一貫性のある論理的なストーリーでなければなりません。

そして第四に、採択後を見据えた meticulous な実行管理です。補助金は後払いであり、厳格な経費管理と報告義務が伴います。この最終フェーズを乗り切るための財務的体力と管理能力が、真の意味で補助金を事業の糧とするための最後の鍵となります。

この補助金への挑戦は、決して容易な道ではありません。しかし、そのプロセスを通じて得られる経営計画の策定能力と事業遂行の経験は、補助金の額面以上の価値を持つ無形の資産となります。このガイドが、挑戦するすべての小規模事業者にとって、持続的成長への確かな第一歩を踏み出すための一助となることを願っています。

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